杉並区の「待機児童」は0だけど「入園決定率」は84.0%。『100都市保育力充実度チェック』(2023年版)のデータから保活事情を読み解く

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杉並区が「待機児童」0を初めて達成したのは平成30年(2018年)です。
以来、それを継続していると発表されていますが、だからといって、保活は安心と考えるのは尚早です。

なぜなら、新規申込における4月1日時点の入園決定率(認可保育施設・事業に入園申込をした児童のうち入園が決定した児童の割合)は84.0%だからです。

今回は保育園を考える親の会が発行する『100都市保育力充実度チェック』(2023年版)のデータから、杉並区の待機児童の真の姿について考察しました。

『100都市保育力充実度チェック』は無断転載禁止となっております。
本ブログにおけるデータの引用にあたり、保育園を考える親の会 普光院 亜紀様よりお許しをいただいております。

4月1日時点の新規申込の入園決定率84.0%の内訳は認可外利用・育休延長が2トップ

待機児童にカウントされない方のうち、意図的に育休を延長したい方の数字を得ることはできませんが、そうした方を除いても、新規申込の入園決定率が84.0%であるということは、全然安心できる状態ではないと考えた方が良いと思います。

なお、入園決定率とは保育園を考える親の会が独自に調査した数値です。

【表1】新規申込における4月1日時点の入園決定率(全年齢)

冒頭で、新規申込における4月1日時点の入園決定率は84.0%とお知らせしました。
「新規申込」としているのは、一旦入園すると学年が1つ大きくなってもそのまま同じ園を利用するケースがほとんどだからです。

(1)認可保育施設・事業への入園申込児童数3,628
(2)上の内、認可保育施設・事業に入園が決定した児童数3,047
(3)認可保育施設・事業に入園申込したが決定しなかった児童数(辞退含む)581
(4)認可保育施設・事業に入園申込をした児童のうち入園が決定した児童の割合(入園決定率)84.0%
【表1】新規申込における4月1日時点の入園決定率(全年齢)

【表2】待機児童数にカウントされない児童数(581名)の内訳

【表1】における(3)の581名の内訳は下表の通りです。
なお、2つの事由に当てはまるケースもあるため、581名が【表2】の合計値とはなりません。

(1)幼稚園利用児童数3
(2)企業主導型保育事業利用児童数2
(3)地方単独保育施設利用児童数(認証保育施設など)473
(4)求職活動中のうち、求職活動を休止している者1
(5)特定の保育園等を希望している者44
(6)育児休業中の者241
【表2】待機児童数にカウントされない児童数の内訳

「待機児童」にカウントされない認可外利用・育休延長で合計716名

認可外利用者は475名

一番多い(3)の「地方単独保育施設利用児童数」は、杉並区の場合は認証保育施設を利用する方などが該当します。

(2)の「企業主導型保育事業利用児童数」の企業主導型保育事業も認可外保育施設として扱われますが、認可に入園希望を提出したけれど、希望の園に内定が得られなかったため、こうした認可外を利用することになった方は、待機児童としてはカウントされません。

育休延長は241名

(6)の「育児休業中の者」は、内定を得られなかったために育休を延長した方です。

倍率の高い園を意図的に選んだり、指数の-20点を適用することを認めたり、「積極的に」育休延長を行う方が一定数いらっしゃる中、致し方なく育休延長せざるを得なかった方もいらっしゃるはずです。
なお、意図的な育休延長かどうかまではデータから判別することはできません。

意図的かそうでないかに関わらず、育休延長の方も待機児童としてカウントされません。

特定園の希望は44名

(5)の「特定の保育園等を希望している者」とは、自治体が自宅から20~30分の園の情報提供を行っても、きょうだいと同園を希望するなど、特定の保育園を希望し、内定を得られなかった方です。

こうした場合も、待機児童としてカウントされません。

保育施設の合計空き定員1200超は保育園余りの状況。希望園と入れる園のミスマッチ。

一方で、杉並区内の保育施設の合計定員に対して、空き定員は2022年から1,200を超える状況が続いています。

合計定員(A)合計利用児童数(B)空き定員(A-B)
2023年度14,75413,4801,274
2022年度14,62513,3321,293
2021年度13,77612,7451,031
【表3】保育施設 空き定員の推移

入園決定率が84.0%(764名)であるのに対し、空き定員が1,200を超えるという状況は、保護者が利用申込する園と利用できる園とにミスマッチが起きていて、保育園余りが始まっているといえます。

人気園(利用に必要な指数が高い園)を狙うのではなく、入りやすい園を選んで申し込むことも保活を乗り切る有効な手段といえます。

待機児童0で安心は禁物

これまで見てきたように、自治体が発表する「待機児童0」は確かにその通りです。
しかし、待機児童にはカウントされないけれど、認可保育園の利用ができていない方が581名いることも事実です。

「待機児童」の定義をきちんと理解し、数字を正確に読み取った上で保活対策を立てるのが良いと思います。

あくまで4月1日時点の数字 年度途中は更に注意が必要

ご紹介したの数値は全て4月1日時点の数字となり、年度途中に入園を考えている際には更に注意が必要です。

年度途中の入園を検討されている方は杉並区HPに公開される保育施設の毎月の空き状況を定期的にチェックし、入れる時期を狙って入園申込を行うようにしましょう。

4月入園で1歳児クラスは埋まるものの、夏頃までは0歳児クラスでは空きのある園も多いという見解もあります。

必要なデータを集めて保活対策を 欲しいデータは自治体からは得られない

自治体が発表している「待機児童0」の情報だけでなく、その実情がわかるデータを自治体から得ることは難しいのが事実です。
「待機児童数ゼロ」は政治目標であり、その目標を達成した事実はあるので、自治体にとっては見せたくない数字なはずだからです。

だからこそ、自治体とは違うルートで保活に必要なデータを集めてしっかりとした保活対策を立てられると良いと思います。

『100都市保育力充実度チェック』とは

『100都市保育力充実度チェック』は首都圏など都市部自治体の保育施策について、保育園を考える親の会が独自に行う調査をまとめ、発行されています。

文献に記載されているその他のデータ

記事の中でご紹介したデータ以外にも下記のデータが記載されています。

  • 保育の整備状況(認可・認可外) 
  • 認可保育施設・事業の入園状況
  • 認可保育施設・事業の入園選考 
  • 認可保育施設・事業の保育料・給食
  • 認可保育所の延長保育、夜間保育、土曜保育、休日保育
  • 認可保育所の0歳児保育、障害児保育、病児・病後児保育、一時預かり
  • 認可保育所の人員の充実度
  • 認可保育所の面積・園庭・保育の質確保策
  • 公立保育所の民営化の動向

文献データ

文献名100都市保育力充実度チェック 2023年度版
調査・監修保育園を考える親の会
発行者普光院 亜紀
専用HP100都市保育力充実度チェック 専用HP
『100都市保育力充実度チェック』文献データ

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